2026.02.18
ページ番号:246
令和6年民法改正でどう変わる? 養育費の新ルールと知っておきたいポイント
受け取り側・支払う側が知っておくべき重要ポイント
養育費は、離婚後のこどもの生活を支える大切なお金です。
ですが、現実には「取り決めがされない」「支払われない」という問題が全国的に深刻化しており、ひとり親家庭の大きな経済不安につながってきました。こうした状況を受け、令和6年の民法改正では、養育費の「取り決め」と「支払いを確実にする仕組み」が大幅に強化されました。
ここでは、ひとり親家庭のみなさんが知っておきたい主要ポイントを、分かりやすく説明します。
養育費に関する民法改正の大きな方向性
今回の改正は、次の2つを柱としています。こどもの権利としての養育費を保障するためのものです。
1.法定養育費の請求権の新設
2.養育費の確実な履行のための制度強化(支払われない問題への対応)
次に詳しく説明します。
「法定養育費の請求権の新設」について
協議離婚では、父母が協議離婚をする際に定めるべき事項として、「親子交流」、「親権者」だけでなく「子の監護に要する費用の分担(養育費)」が法律上明記されています。父母の協議等により養育費の取決めがなければ請求することが難しいのが現状でした。
そこで、今回の改正により新設されたのが「法定養育費」制度です(改正民法第766条の3) 。これは、養育費の取り決めをせずに離婚した場合でも、こどもと同居する親が別居親に対して、法律に基づき最低限の支払いを請求できる権利です 。
迅速な支払いを優先するため、相手方の収入が不明な場合でも算定可能な基準として、子1人あたり月額2万円とされています(2025年12月末現在)。
「養育費の確実な履行のための制度強化」について
最も大きな改正のひとつが、「確実に支払われるようにする仕組み」が強化されたことです。ひとり親家庭にとって大きな負担となっていた“養育費が未払いになる問題”への対策として、次のような規定が整備されました。
(1)裁判手続の利便性向上
養育費が支払われない場合、相手方の財産を調べるための「財産開示手続」などが利用されやすいように改正されました。具体的には、裁判所に対する1回の申立てで、差押えだけでなく財産の開示手続(養育費の支払義務者は、その保有する財産を開示しなければならない)、情報提供命令(市区町村に対し、養育費の支払い義務者の給与情報の提供を明示する)という一連の手続きを申請することができるようになります。
(2)養育費の取決めに基づく民事執行手続きの容易化(先取特権の付与)
養育費が未払いの場合、親権者が相手方の財産を差し押さえるためには、いわゆる「債務名義」が必要でした。今回の改正により、養育費に「先取特権」という優先権が付与されることになりましたので、「債務名義」がなくても、離婚協議書等の養育費の取決めに関する文書を用いて差押えの申立てを行うことができるようになります。この「先取特権」が付与される養育費の範囲は今のところ月額8万円のようです。
養育費の取り決めは「定期的に見直す」考え方が推奨される
改正民法の背景にある考え方として、養育費は一度決めて終わりではなく、こどもの成長に応じて見直しが必要という点が強く意識されています。
進学、部活、医療、塾など、こどもに必要な費用は年齢とともに変化します。
そのため、今後は、
• 年1回程度の話し合い
• こどもの進学時期に合わせた見直し
• 家計状況の変化があった場合の調整
などがより重視されることが期待されます。
養育費は「こどもの権利」。改正民法でより確実な仕組みへ
養育費は、こどもが安心して成長するために欠かせない大切なお金です。
もし協議がうまく進まない、支払いが滞っている、金額の見直しをしたいなどの悩みがある場合は、弁護士や行政の支援窓口に早めに相談することをおすすめします。
この記事を書いた人
弁護士 坂本志乃 弁護士法人Nexill&Partners (旧:弁護士法人菰田総合法律事務所)
福岡県福岡市出身。九州大学法科大学院修了後、2016年弁護士登録。同年に弁護士法人菰田総合法律事務所入所。入所当初から離婚や相続等の家事事件を中心に経験を積み、中小企業支援に業務分野を広げ、現在は企業労務に注力している。


