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コラム 子育てのこと 制度のこと

ページ番号:243

令和6年民法改正で新しく示された「親の責務」とは ― こどもの最善の利益を守るために

弁護士 坂本志乃

令和6年民法改正で明確化された「親の責務」について

離婚後の親権や親子交流の制度が大きく見直されましたが、その根本には「親の責務」が法律上明確に位置付けられたという重要なポイントがあります。
これまでも、親には当然のようにこどもを育てる義務・責任がありました。しかし民法上は明確な定義がなく、親の役割や責任範囲がわかりにくい点がありました。

そこで改正民法では、「親の責務」を法律の条文として規定し、こどもに対する親の基本的な姿勢・役割を明文化しています。この新しい規定のポイントを、ひとり親家庭にもわかりやすく解説します。

 

親の責務とは何か ― 改正民法が定めた基本理念

改正後の民法では、次のように規定されました。

(親の責務等)
第八百十七条の十二 父母は、子の心身の健全な発達を図るため、その子の人格を尊重するとともに、その子の年齢及び発達の程度に配慮してその子を養育しなければならず、かつ、その子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならない。
2 父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならない。

これは、親の義務として新しく課されたものではなく、従来から社会通念として存在していた考え方を、法律として明確に示したものです。

 

親の責務が明確化された背景

今回の民法改正は、次の社会的課題を受けて行われました。

•    離婚後の親権や面会交流をめぐるトラブルが増加
•    こどもが「自分の気持ちを聞いてもらえない」ケースが多い
•    別居親との関係をどう維持するかという課題が深刻化
•    こどもの虐待・DV被害が社会問題化
•    こどもの権利条約の理念を国内法に反映させる必要性

「こどもの利益を中心に据える」という理念をより強く打ち出し、親の在り方を法律で示したものです。

 

親の責務が明確化されたことで何が変わる?

ひとり親家庭にとって次のような点で影響が生じます。

(1)親権や監護に関する判断の基準がより明確に
民法の条文に「子の最善の利益」が明確に位置付けられたことで、
•    親権者の指定
•    監護者の指定
•    親子交流の可否や内容
•    進学や医療など重要事項の決定
等において、家庭裁判所が介入する時の判断では、従来以上に 「こどもの利益」中心の判断 になることが期待されます。

両親の希望よりも、「こどもにとってどちらが良いか」が優先されやすくなり、判断の透明性が高まるのではないかと思われます。


(2)こどもの意思を尊重する重要性がこれまで以上に強調
親がこどもの進学、治療、居住地などを決める際、「子の利益を最も優先して考慮する」ことが必要であることが条文上示されました。
特に以下の場面では、こどもの利益・意思の把握が重要とされます。
•    面会交流の実施
•    学校選択
•    転居(居所変更)
•    離婚後の生活環境の決定
•    親権者・監護者の指定


(3)別居親との関係性のあり方にも影響
「責務」の明文化は、別居親との関わり方にも影響します。別居している親であっても、「こどもの最善の利益のために協力しなければならない」ということが明確になったため、
•    安否確認
•    親子交流の実施
•    養育への協力
•    子の成長を支える役割分担
が、従来以上に求められるようになります。

ただし、DV・虐待が疑われる場合は別で、こどもの安全が最優先されます。

 

親の責務の明文化は「こども中心」の考え方をより強化するもの

令和6年の民法改正で明確化された「親の責務」は、これまで慣習的・道徳的とされていた親の役割を、法律としてしっかりと位置付けたものです。
特に重要なポイントは次のとおりです。
•    こどもの意思・人格を尊重することが明文化された
•    離婚後の親権・監護・面会交流などの判断基準がよりこども中心に

ひとり親家庭にとっては、日々の育児や離婚手続きの判断において、「何を基準に考えればよいのか」が見えやすくなる点がメリットといえます。
家庭内で判断が難しい場合や、相手方との協議がうまく進まないときは、無理をせず弁護士や支援機関に相談し、こどもにとって最適な解決策を探すことをおすすめします。

 

この記事を書いた人

弁護士 坂本志乃 弁護士法人Nexill&Partners (旧:弁護士法人菰田総合法律事務所)

福岡県福岡市出身。九州大学法科大学院修了後、2016年弁護士登録。同年に弁護士法人菰田総合法律事務所入所。入所当初から離婚や相続等の家事事件を中心に経験を積み、中小企業支援に業務分野を広げ、現在は企業労務に注力している。