コラム 子育てのこと 心のケア

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ひとり親になった場合、こどもの心の発達への影響は?

医学博士 山下あきこ

2017年に日本で行われた調査では、ふたり親世帯よりひとり親世帯の方が、不登校の経験のあるこどもが多いという結果が出ています(ふたり親3.7%、ひとり親11.3%)。私個人としては不登校が悪いとは全く思っていませんが、何らかの心理的な影響があることは考えられます。

ひとり親になる理由には、離婚、未婚、死別などがあります。もっとも多いのは離婚で8割弱を占めますので、ここでは離婚によるこどもの心への影響について解説します。

ある調査によると、離婚後2年くらいはこどもの精神状態が不安定になりやすいのですが、その後は戻ります。人格の形成に影響が出たという結果はほとんどないのです。

ただし中には親の離婚がトラウマになり、大人になってからの恋愛や結婚に影響が出るケースもあります。例えば、同じ人と長く付き合うことができないとか、結婚に希望が持てないので決断できないという場合です。
一方で、親が不仲で離婚をした経験があるからこそ、自分はあったかい家庭を作るんだと語り、実際に仲の家庭を築く人もいます。

この違いの理由は、「こどもの頃に親が離婚したときの寂しさ、怒り、悲しみを、表現することができたか」によるそうです。
「淋しいなんて言っちゃいけない。」と我慢したり、「私は別に父親(母親)がいなくても何ともない。」と自分の感情に目を向けなかったこどもは、心の奥にあるくすぶりに蓋をしたまま大人になります。
「お父さんがいなくて、本当は淋しい。」「私に何も聞かないで勝手に二人で決めて、ひどい!」「親の都合で転校させられてムカつく。」と言ったような気持ちを発散して、受け止める人がいることで、トラウマにしないで気持ちを解決する方向に持って行き、精神的に成長するのです。

こどもが気持ちを語れるように、こちらから話を聞く機会を作りましょう。そして、親がいつも気丈に振る舞っていたらこどもはますます弱音を吐けません。お父さんもお母さんも、弱いところを見せてよいのです。
「私はこんなことがあって、こう思った。あなたはどう感じる?」そんなふうに聞いてみましょう。
年齢が小さいからといって、人格が未熟とは限りません。人生経験が少ないこどもでも、私たち大人と同じように感情を持ち、苦しみを抱えて生きているのです。親と子が上下関係ではなくて、人として横の関係でこどもと語り合いましょう。
 

この記事を書いた人

医学博士 山下あきこ 株式会社マインドフルヘルス代表
 
医学博士、神経内科・内科医師。二児の母。病気を治すより、健康づくりを行うことを決心し、病院を辞めて会社を設立。マインドフルネス、well-being、栄養、運動、睡眠、脱依存、習慣化という要素を軸にセミナーや本の執筆を行っている。