2026.02.04
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令和6年民法改正がひとり親家庭に与える影響とは ― 施行時期と知っておきたいポイント
令和6年民法改正の概要とひとり親家庭への主な影響
離婚後のこどもの養育に関する制度を大きく見直した重要な改正で、家族の在り方の多様化やひとり親家庭をめぐる課題の深刻化を踏まえて行われました。
特に、こどもの利益(最善の利益)を最優先にするという理念をより明確にし、父母の権利・義務を整理した点が特徴です。
ここでは、施行時期と、ひとり親家庭にとって特に影響の大きいポイントをお伝えします。
改正民法はいつから施行される?
令和6年の民法改正は、令和8年4月1日から施行予定とされています。
現在のルールの下で離婚を検討している家庭も、施行時期によって適用される法律が異なる場合があるため、今後のスケジュールを意識しておくことが大切です。
民法改正の目的
今回の改正には、次のような背景があります。
• 離婚後の「共同親権」導入の必要性が議論されてきた
• こどもと離れて暮らす親(特に別居親)の関与をどう確保するかという社会的要請
• 親子交流のトラブルが増加し、法的枠組みの明確化が求められていた
• 養育費の不払いが社会問題化している
• DV・虐待からの保護と、こどもの安全確保の両立が必須
このような状況を踏まえ、父母それぞれのかかわり方を整理しつつ、こどもにとって最適な環境を確保するための法改正が行われました。
改正民法がひとり親家庭に与える主な影響
今回の改正で、ひとり親家庭に特に関わる部分は次の3点です。
(1)共同親権の導入 ― 離婚後も父母双方が親権者となれる可能性
現行法では、離婚後の親権者は 「父または母のどちらか一方」 に限られていますが、改正後は、以下の2つの選択肢になります。
単独親権(従来の制度)
共同親権(新たに選択可能)
共同親権は協議離婚の場合は双方の協議により、協議が整わない場合等は家庭裁判所が子の利益の観点から単独親権、共同親権のいずれかを定めます。
注意が必要なのは、子の利益を害する場合は共同親権を定めることができないこと。たとえば、DV・虐待が疑われる場合は共同親権が認められません。
ひとり親家庭にとっては、別居親との関わり方が変わる可能性がある重要なポイントです。
(2)監護・教育に関する意思決定ルールの明確化
共同親権を選んだ場合でも、父母が全ての事項を共同で決める必要があるわけではありません。改正民法では、次のように役割分担が整理されました。
日常の行為(食事・通学・健康管理など) →単独で決定可能
重要な事項(進学、医療行為、居所変更など) → 原則として双方協議
日常生活に支障が出ないよう配慮されています。また、父母の一方を監護者(こどもと一緒に暮らしながら、こどもの養育や教育を行う権利と責任)と定めることで、監護者になった方は、こどもの進学や未成年の就職の決定等、上記の「日常の行為」に該当しない決定を単独で行うことできます。
離婚後のトラブルとして多い「連絡が取れない」「意思決定が進まない」といった問題に一定のルールが設けられた点は、ひとり親家庭の負担軽減にもつながります。
(3)親子交流と養育費確保の仕組み強化
今回の改正では、こどもの養育を総合的に支援するため、次のような規律が整備されました。
①親子交流のルールを明確化
【別居中の親子交流】
• 父母が協議で決めることが原則
• 決まらない場合は家庭裁判所が決定
【試行的親子交流の明文化】
【祖父母、兄弟姉妹等との交流の実施】
②養育費の履行確保の制度強化
改正法では、
• 法定養育費(月額2万円予定)の請求権が新設
• 養育費の取り決めに基づく民事執行手続きが容易化
• 養育費に関する裁判手続きにおける利便性の向上
などが位置付けられ、養育費の「取り決め」「支払い確保」双方の支援が強化されています。ひとり親家庭にとって最も大きな不安である「養育費が払われない」問題への対応が、改正民法でより手厚くなった点は重要です。
改正民法は「こどもの最善の利益」をより重視する方向へ
令和6年民法改正は、離婚後の親権や面会交流、養育費といった、こどもをめぐる制度を大きく見直すものです。特にひとり親家庭にとっては、下記の点が直接の影響ポイントになります。
• 共同親権の導入
• 監護・教育の意思決定ルールの明確化
• 親子交流・養育費確保の仕組み強化
改正の施行は令和8年4月1日です。
今後の離婚手続や養育に備えて早めに理解しておくと安心です。離婚や親権、養育費に関する不安や疑問がある場合は、ひとりで抱え込まず、弁護士や支援機関に早めに相談することをおすすめします。
この記事を書いた人
弁護士 坂本志乃 弁護士法人Nexill&Partners (旧:弁護士法人菰田総合法律事務所)
福岡県福岡市出身。九州大学法科大学院修了後、2016年弁護士登録。同年に弁護士法人菰田総合法律事務所入所。入所当初から離婚や相続等の家事事件を中心に経験を積み、中小企業支援に業務分野を広げ、現在は企業労務に注力している。


