コラム 心のケア 離婚・再婚

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離婚を迷っている人へ

医学博士 山下あきこ

 結婚する時と違って、離婚するときの決断はたくさんのことを考えて総合的に判断しなくてはいけませんね。子どものこと、住む場所、経済的なこと、仕事のことなど、たくさんの問題が出てきます。それでも離婚したいという気持ちになっているあなたは、心理的に辛い状況なのだろうと思います。
 苦しい気持ちになっているときは、「離婚さえできたら、もっと楽になって幸せだろう」と漠然と思いがちです。結婚する前は「結婚すれば幸せになれる」と思いませんでしたか?「〜すれば幸せになれるはずだ」という考え方はフォーカスイリュージョンと呼ばれています。お金持ちになれたら幸せ、いい仕事につけば幸せ、あの車を手に入れたら幸せ、というように、人は地位や財産などはっきりと人から見て分かる方法に幸せを求めるものなのです。しかし、そのような幸せは長続きしません。
パートナーと離れたらその人との人間関係の負担が軽くなるかもしれませんが、経済的には苦しくなったり、仕事や住む場所が変わって別のストレスを抱える可能性もあります。そして、苦しみから逃れる方法を考える前に、まず自分の苦しい気持ちと向き合う必要があります。相手を批判して攻撃したり、逃げたりしても、あなた自身の苦しみが軽くなることはないでしょう。
「私は、あんなことを言われたのが辛かった」
「私は、こんなことが苦しかった」
このように「私は」を主語にして、信頼できる人にその体験を話してみると、自分の気持ちを整理しやすくなります。話す相手がいなければ、ノートなどに詳しく書き出してみるとよいでしょう。さらに、「なぜ離婚したいのか」「離婚するとしたら、どんなことが不安か」などについても話したり、書き出したりしてみましょう。
人に話すのは、アドバイスをもらうためではなく、自分の気持ちを客観的に見つめ直すためです。いろんな意見を言う人がいますが、必ずしも従う必要はありません。最終的には自分で決断するしかないのです。あなたが絶対に失いたくないものは何ですか?子ども、お金、仕事、自由など、重要なものは人によって違います。あなたにとって重要なものを軸にして、5年後の自分をイメージしてみましょう。結婚を継続した5年後と、離婚した5年後、あなたはどちらの自分になりたいでしょうか?

この記事を書いた人

医学博士 山下あきこ 株式会社マインドフルヘルス代表
 
医学博士、神経内科・内科医師。二児の母。病気を治すより、健康づくりを行うことを決心し、病院を辞めて会社を設立。マインドフルネス、well-being、栄養、運動、睡眠、脱依存、習慣化という要素を軸にセミナーや本の執筆を行っている。