コラム 離婚・再婚 お金

ページ番号:163

離婚協議書・公正証書って?

弁護士 坂本志乃

離婚をする際、離婚届を役所に提出すればそれで良いと思っていませんか?ここでは、離婚協議書の重要性をご説明いたします。

離婚協議書とは
民法763条では夫婦の話合いで離婚することができる旨を定めています。これを協議離婚といいます。この話合いの内容については、常に書面にすることまでは要求されません。離婚について話し合いを行ない、離婚届を役所に提出すれば離婚は成立します。

しかし、例えば、離婚についての夫婦の話合いで、相手方が自分に対して養育費を支払うという約束をしたのに、離婚が成立した後、相手方がこの約束を守らず養育費を支払ってくれないなどの場合が考えられます。このような場合に対処するためにも離婚についての夫婦の話合いの内容を書面化しておくことが重要になります。この書面を「離婚協議書」といいます。
相手方が養育費を支払わなかった場合、離婚協議書があれば、これを証拠として、未払分の養育費の支払い請求訴訟を提起することができます。ただし、訴訟となれば、判決を得るまでに訴訟費用や時間がかかるものです。
そこで、離婚協議書を公正証書で作成しておくことも重要になってきます。

公正証書として作成された離婚協議書
公正証書とは、個人または法人からの依頼を受けて公証人が作成した文書のことをいい、公証役場で作成します。
公正証書には、相手が支払う養育費などのお金の内容だけでなく、そのお金を払わない場合に給与、預貯金などの財産を差し押さえる強制執行をしてもよいという文言(これを「強制執行認諾文言」と)を記載しておくことができます。
強制執行認諾文言があれば、相手方が養育費などを支払わなかった場合、公正証書を作成した公証役場で、

①公証人から相手方に公正証書を送ってもらい、相手方に送られたという証明書(送達証明書)を貰い、
②公正証書を作成した公証人から公正証書正本に強制執行してもよいという証明を貰います(これを「執行文の付与の申立て」といいます)。

そして、裁判所に執行文の付いた公正証書正本と送達証明書を提出することで、相手方の財産を差し押さえる申立てができます。このように、強制執行をするために裁判所に訴える費用や判決を得るまでの時間がかかりません。
ただし、公証人に離婚協議書の作成を依頼する際は、公証人への手数料の支払いが必要であり、また添付資料の提出が求められるため、それなりの時間を要することを覚えておきましょう。
 

この記事を書いた人

 

弁護士 坂本志乃 弁護士法人Nexill&Partners (旧:弁護士法人菰田総合法律事務所)

 

福岡県福岡市出身。九州大学法科大学院修了後、2016年弁護士登録。同年に弁護士法人菰田総合法律事務所入所。入所当初から離婚や相続等の家事事件を中心に経験を積み、中小企業支援に業務分野を広げ、現在は企業労務に注力している。