コラム 支援・サポート ひとり親の生活

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後見人の制度とその種類について

弁護士 坂本志乃

後見と聞くと、高齢で判断能力が低下した方のための制度と思われるかもしれません。しかし、ひとり親家庭にとっても、後見制度が重要な役割を果たすことがあります。今回は、成年後見人と未成年後見人の違い、そしてそれぞれの制度がどのような場合に利用されるのかについて、具体的に解説していきます。

 

1.成年後見人とは? 
成年後見は、認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分な成人を保護するための制度です。判断能力の程度によって、後見、補佐、補助という区分があります。成年後見人は、後見開始の審判を受けた本人に代わって契約を結んだり、本人の契約を取り消したりすることができます。

一般的には、高齢や病気により判断能力が低下した場合に、後見制度を利用することが多いでしょう。認知症などにより判断能力が低下した場合には、財産管理等も難しくなるため、成年後見人を選任することで、預貯金の管理や医療契約の締結などを行うことができます。

ひとり親家庭の場合だと、例えば、重度の知的障害のあるお子さんが成人した際に、不当な契約を結んでしまったり、詐欺被害に遭ったりすることを防ぐために、この制度を利用することが考えられます。

後見申立てをする際には、後見人の候補者を記載することができます。親が後見人になる場合も多いですが、お子さんに多額の財産がある場合には、家庭裁判所が、弁護士や司法書士などの専門家を後見人として選任することもあります。

 

2.未成年後見人とは? 
未成年後見人は、親権者が死亡するなどした場合に、未成年の子どもを保護するための制度です。未成年後見人は、未成年者の法定代理人として、親権者と同様に、子どもの生活環境を整え、財産管理、学校の入学手続、その他契約等を行い、子どもの利益を守る役割を担います。

両親が同時に死亡した場合のほか、ひとり親家庭では、親権を持つ親が亡くなった場合に、未成年後見制度が利用されます。つまり、離婚の際に夫婦の一方(ここでは妻とします。)を親権者とし、その後に妻が亡くなった場合、自動的に元夫が子どもの親権者となるわけではありません。

誰が未成年後見人になるかというと、親が遺言で後見人を指定している場合には、その人物が未成年後見人となります。指定がない場合は、家庭裁判所が適切な人物を選任します。そのため、病気などでご自身が亡くなることを想定されている場合には、遺言を作成し、信頼できる方を未成年後見人に指定しておくと安心です。


このように、後見制度は、ひとり親家庭においても重要な役割を果たします。
今回ご紹介したどちらの制度も、利用を検討される際には、弁護士等の専門家のアドバイスを受け、また、家庭裁判所の相談窓口に問い合わせるなどして、適切な準備を進めることをお勧めします。

 

この記事を書いた人

弁護士 坂本志乃 弁護士法人Nexill&Partners (旧:弁護士法人菰田総合法律事務所)

福岡県福岡市出身。九州大学法科大学院修了後、2016年弁護士登録。同年に弁護士法人菰田総合法律事務所入所。入所当初から離婚や相続等の家事事件を中心に経験を積み、中小企業支援に業務分野を広げ、現在は企業労務に注力している。