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コラム 離婚・再婚 ひとり親の生活

ページ番号:217

離婚後の姓について

弁護士 坂本志乃

離婚は人生の大きな転換点となりますが、その際の姓についての選択は、その後の生活や家族関係に大きな影響を与えます。今回は、離婚後にどの姓を名乗るか、子どもの姓に関する問題、そして姓を選択する際の注意点等について詳しく解説します。

 

1.離婚後にどの姓を名乗るかは自由に決められる?
婚姻の際に姓を変更していた場合は、民法上、離婚すると結婚前の旧姓に戻ることとされています。しかし、結婚期間が長かったり、社会的に婚姻時の姓で認知されていたりする場合など、旧姓に戻ることが不都合になることもあります。

このような場合、離婚後も婚姻時の姓を名乗り続けることが可能です。これを希望する場合は、離婚後3ヶ月以内に市区町村役場に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出しなければなりません。
この届出により、旧姓に戻らず、引き続き婚姻時の姓を名乗ることができます。しかし、この届出を行わないまま3ヶ月を過ぎると、自動的に旧姓に戻るため、注意が必要です。

なお、一度婚姻時の姓を維持すると、その後に旧姓に戻すには家庭裁判所に氏の変更を申立てる必要があります。よって、姓を決定する際は、今後の生活や職業、社会的立場を十分に考慮して慎重に判断することが求められます。

 

2.子どもの姓はどうなる?
離婚後、親権者である親の姓が変わると、子どもの姓がどうなるかが気になるところです。日本の法律では、離婚後に親の姓が旧姓に戻ったとしても、子どもの姓はそのまま維持されます。これは、子どもが姓の変更による影響を受けやすく、特に学校や社会生活において不利益を被ることを避けるためです。

そのため、親が旧姓に戻った後、子どもの姓も親と同じにしたい場合は、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立て」を行う必要があります。この手続きは、子どもの福祉を最優先に考慮するため、裁判所が慎重に審査します。申立てが認められると、子どもの姓は親の旧姓に変更されます。

なお、親が婚姻時の姓を引き続き名乗る場合でも、法律上、親の姓と子どもの姓は別物として扱われてしまうため、この場合も申立てが必要です。詳細は、以前の記事をご参照ください。
 

【参考コラム】離婚後にすべき手続きって何があるの?

 

3.姓を選択する際に気を付けておくべきこと
離婚後にどの姓を名乗るかを決定するにあたっては、まず、姓を変更した場合、仕事や社会的関係に、どれほどの影響があるかを考慮することが重要です。

特に、1で述べたように、結婚後に築き上げた職場での信用や社会的な繋がりが深い場合、姓の変更が大きな影響を与えることがあります。たとえば、旧姓に戻すことで周囲に改めて自己紹介が必要になったり、顧客や取引先に再認識してもらう手間が生じたりすることもあるでしょう。

また、子どもの姓を変更する場合には、子どもが新しい姓に馴染むための時間や心理的な負担が生じることもありますので、慎重な判断が必要です。特に子どもが学校に通っている場合や社会的な活動を行っている場合、姓の変更がもたらす影響は大きく、子どものアイデンティティにも関わりうる問題となります。そのため、子どもの姓を変更するかどうかについては、子どもの意向も尊重し、子どもの将来や生活環境を十分に考慮した上で検討しましょう。

なお、親は旧姓に戻し、子どもは戻さないということも可能ですが、子どもと親の姓が異なることになりますので、学校での手続きや医療機関での対応が煩雑になることがあります。また、子ともが、親と姓が異なることに違和感や、心理的負担を感じてしまう場合もありますので注意が必要です。

 

4.離婚後に旧姓に戻すための手続は?
先述のとおり、離婚後に婚姻時の姓を維持するためには、「離婚の際に称していた氏を称する届」を3ヶ月以内に提出する必要があります。

では、旧姓に戻したい場合にはどのような手続が必要になるのでしょうか。離婚が成立すると、自動的に旧姓に戻ることが法律で定められていますので、離婚後に旧姓に戻したい場合には、特別な手続きは不要です。離婚届を提出する際に新しい戸籍を編成することにより、戸籍が旧姓で新たに編成され、旧姓に戻ることができます。

こちらも、詳細は以前の記事「離婚後にすべき手続きって何があるの?」をご参照ください。

ただし、旧姓に戻した後は、仕事や銀行口座、運転免許証、クレジットカードなど、各種名義の変更手続きを行う必要があります。

 


離婚後の姓に関する選択は、今後の生活や家族関係に大きな影響を与える重要なものです。親自身だけでなく、子どもの姓や将来についても慎重に考えなくてはなりません。具体的な手続についてお困りの方は、各自治体の担当窓口に相談することをお勧めします。法的な相談が必要な場合には、早めに弁護士に相談しましょう。

 

この記事を書いた人

弁護士 坂本志乃 弁護士法人Nexill&Partners (旧:弁護士法人菰田総合法律事務所)

福岡県福岡市出身。九州大学法科大学院修了後、2016年弁護士登録。同年に弁護士法人菰田総合法律事務所入所。入所当初から離婚や相続等の家事事件を中心に経験を積み、中小企業支援に業務分野を広げ、現在は企業労務に注力している。