2025.03.12
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離婚の際の不動産名義変更
離婚の際に重要になるのが、財産分与です。財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を離婚時に公平に分配する制度ですが、財産分与において、特に不動産の扱いは大きな問題となります。不動産は価値も大きく、離婚後の生活に直結するため、当事者間で十分に協議し、適切な手続きを行うことが必要です。今回は、離婚時に行うべき不動産の名義変更手続きについて詳しく解説します。
1.離婚時にやるべき不動産の名義に関する手続
離婚時に不動産の名義を変更するためには、まず財産分与についての合意が必要です。不動産が夫婦いずれかの単独名義か、夫婦共有名義かによって注意すべき点が異なります。
(1)夫婦いずれかの単独名義の場合
不動産が夫または妻のどちらか一方の単独名義になっている場合、その不動産は原則としてその名義人の所有物となります。しかし、婚姻中に取得した不動産であれば、財産分与の対象となり、離婚時にその分与について話し合いが必要です(ただし、婚姻中に不動産を取得した場合でも、相続により取得した場合は、夫婦の協力によらないものになりますので、財産分与の対象外となります)。
単独名義の不動産を相手方に分与する場合は、登記上の名義変更が必要になります。この手続きは、財産分与契約書や離婚協議書を基に、自分たちでまたは司法書士を通じて所有権移転登記手続きをします。登記変更を行わないままにしておくと、将来の売却や相続の際に問題が発生する可能性がありますので、名義変更は速やかに行うことが重要です。
また、不動産の住宅ローンが残っている場合には、ローンをどのように返済するかを十分に協議する必要があります。例えば、夫名義の不動産で、住宅ローンの債務者が夫名義である場合には、不動産を妻の名義に変更し、住宅ローンを借り換えるという方法もありますが、ローンの審査が通らない場合などは、ローンの名義は夫のままにしておいて、毎月妻から夫に住宅ローン相当額を返済するという方法も考えられます。
(2)夫婦共有名義の場合
不動産が夫婦共有名義になっている場合、分配方法を決定する必要があります。共有名義の不動産をどちらが取得するか、または売却して現金を分配するかについて話し合うことが必要です。共有名義の不動産を一方が取得する場合、その取得者がもう一方の持分を買い取る形になります。
この場合も、登記上の名義変更手続きを行い、名義を取得者に統一します。
なお、離婚後も共有名義のまま残すことも可能ですが、離婚後の管理や将来的なトラブルを避けるためには、どちらか一方の名義に変更することが一般的です。
また、共有名義を解消する際に、場合によっては譲渡所得税等が発生する可能性があるため、税務面でも慎重な対応が求められます。
2.不動産を子ども名義に変更することはできる?
離婚時に不動産を子ども名義に変更したいとお考えの方もいらっしゃるかと思います。子ども名義にすることは、法的には可能ですが、実際の管理や、税金の問題もありますので、慎重な検討が必要です。
まず、子どもが未成年の場合には、成人するまでの間、親権者である親が不動産の管理責任を負うことになります。そのため、親が十分に管理できない場合、子どもの財産が適切に維持されないリスクがあります。さらに、不動産を子ども名義にすることで、子どもに贈与税が課されるのが通常でしょう。
最終的に不動産の名義を子どもにしたいという目的であれば、不動産を親の名義にし、親が亡くなった場合に備えて、遺言書を作成し、不動産が子どもに確実に相続されるようにしておくことで十分といえます。この際、遺言書には、不動産の管理方法や相続時の手続きについて詳細に記載することが望ましいでしょう。
子どもの将来を考え、不動産をどのように管理し、どの時点で名義を変更するかについては、弁護士や税理士等のアドバイスを受けながら慎重に判断することが重要です。
財産分与は、特に当事者間での離婚協議でまとまらないことが多い問題の一つです。特に自宅の不動産名義変更は、離婚後の生活に大きな影響を与えます。法律的なリスクやローンの扱い、税務対策、煩雑な手続きなど、ご自身で解決するには困難な問題が多々ありますので、お早めに弁護士等の専門家に相談し、助言を受けましょう。
この記事を書いた人
弁護士 坂本志乃 弁護士法人Nexill&Partners (旧:弁護士法人菰田総合法律事務所)
福岡県福岡市出身。九州大学法科大学院修了後、2016年弁護士登録。同年に弁護士法人菰田総合法律事務所入所。入所当初から離婚や相続等の家事事件を中心に経験を積み、中小企業支援に業務分野を広げ、現在は企業労務に注力している。